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時が極まれば反転する ~すべての問題は必ず解決する~


飯田清人


散逸構造理論

イリア・プリゴジン(1917年ロシア生まれ、1977年ノーベル化学賞)


絶えず外界からエネルギー(非エントロピー:秩序)を取り入れ、このエネルギーを使用する事によって、「系」の秩序を保ち、その結果生じたエントロピー(無秩序)を「系」の外に放出(散逸)する構造(組織)のこと。この理論はもともと化学分野の現象を説明するための理論でしたが、生物科学や社会科学の分野にも応用可能です。


例えば、我々の身体は外界からエネルギーとしての食物と酸素を取り入れ、エネルギー代謝によって秩序(非エントロピー)を形成しています。その結果として不要となった物質を排泄物や体温などを通じて、いわゆる無秩序(エントロピー)を放出して、安定した身体の状態を維持します。

また事業などで危機に直面したとき、そのショックのため一時的に大きな動揺(無秩序の増大)が起こります。しかしその危機を突破するための対策と努力(秩序の為の外界からのエネルギーの取り込み)がなされ、それがある一定の極限を越えると、過去に構築された古いシステムが崩壊(散逸)していきます。これによって新しい事業環境にふさわしい組織やシステムが構築され、事業の安定が取り戻されるのです(新しい秩序の形成)。


病気の回復も同じように、心身に異常状態が現れると、一時的には苦悩が増大しますが、我々の体内ではその異常を回復すべく生理的なあらゆる努力がなされます。その努力が一定の極限を越えると、その原因となっていた要因が自然に取り除かれ、再び心身のバランスを回復して安定した状態が取り戻されるのです。これがホメオスタシスでありセルフヒーリング(自己治癒力)です。


自己に内在する無限能力(智慧の宝庫)の存在を信じよ


すべての成功物語や病気克服などの事例には、どんな困難にもまた失敗の連続にも、夢を持ち続けて諦めずに頑張り抜いた感動の不屈の精神と努力が見られます。目的を達成するまでは決して諦めず、常に自分の可能性を信じて突き進む情熱がそこにあります。


私たちの潜在意識の中には、「無限能力(智慧の宝庫)」が眠っています。それはすべての人々と共通して繋がっている智慧の宝庫であり、それはまた万物を支配している偉大な力とも繋がっていると考えてよいのです。私たちには生まれながらにして、すべての問題を解決し、夢を実現させるための天才や成功者としての素養が備わっているのです。


大切なことは、問題を解決しようという強い意志と信念です。この情熱が自己に内在する智慧の宝庫を刺激し、働かせ、そして解決への道を開くのです。新しいアイデアの発現や心身のバランスの回復、支援の手を差し伸べてくれる人の出現や取り巻く環境の変化など、これらは決して偶然にやって来るのではありません。問題解決に向かうその情熱と努力に対して、内在する無限の智慧の宝庫から湧き出てくる必然的な答えなのです。


時が極まれば反転する、それまで待つは「忍」の一字


散逸構造理論にあるように、危機突破のあらゆる努力が継続的になされ、それが極限に達した時にすべての問題は解決に向かって行きます。経営危機であれ、願望の実現であれ、病気の克服であれ、あらゆる問題は必ずいつか転機を迎えます。

そのときまでの労苦や悩みは必ず癒される時がくるのです。心から「転機は必ず訪れる」と信ずることが大切です。


夜明け前が一番暗いと言います。この反転する転機のときには、古い無秩序が一度に放出され始めるために、一時的に状況が悪化するように見えることがあります。

このような時には誰しも絶望的になり、また諦めてしまいたくなるものですが、「今、状況は反転したのだ。」というプラス思考を持って、自己に内在する無限の能力と状況の好転を確信して、頑張り抜く強い精神力が求められるのです。


「憂きことのなおこの上に積もれかし限りある身の力試さん」(熊沢蕃山 儒学者)

「冬枯れの木々の梢に積もる雪の重きさだめを振り払いつつ」(飯田清人)


逆境の時こそ自分を磨く、文豪森鴎外の左遷に学ぶ


明治の文豪、森鴎外。彼は軍医であり、つまり今で言うサラリーマンの一人でした。ある時の人事異動で、同僚たちが栄転する中で、彼だけが九州の小倉に左遷されたのです。鴎外は落胆し、悩み苦しんで、辞表までしたためましたが、最後は思い直して、気持ちを切りかえて勇躍小倉へ赴きました。

小倉に赴任した鴎外は、心を新たにして、それまで以上に軍医としての仕事に励むとともに、この逆境の中で、時間を見つけてドイツ語を学び、翻訳などに精を出して、自分を磨くことを忘れませんでした。


後にその時の自己研鑽が活きて、仕事では陸軍軍医総監というトップにまで昇り、さらに文壇で認められ大文豪とまで呼ばれるようになるのです。鴎外はこの逆境の時に、心を新たにして不満や悩みを振り払い、将来の希望に向かって、ひたすら自分を磨いたことが、後の栄光をもたらしたといえるのです。


「一苦一楽、相磨錬し、練極まりて福を成すものは、その福始めて久し。一疑一信、相参勘し、勘極まりて知を成すものは、その知始めて真なり。」(菜根譚後集74条)

苦しんだり楽しんだりして修業を続けて、一生懸命練磨を重ねてつかんだ成功や幸福であってこそ、その幸福は長続きする。また疑ったり信じたりして、苦心を重ねて考え抜いた知識や知恵であってこそ、それが本物になる。


何時でも、何処でも、どんな境遇にあっても、自分自身を信じ、主体的に自分を活かし切れば、そこに自分の本当の人生があります。逆境に負けることなく、今のこのときを精一杯生きぬく強さが、苦しみを喜びに変え、その後の豊かな新しい人生を約束するのです。


常に夢を持って、前向きに、プラス思考で明るく笑って生きよう


「泣いた分だけやさしくなれます。つらい思いをした分だけ強くなれます。笑った分だけ幸せになります。」

これは栃木県のある病院で見ました。いい言葉ですね。